■「けんみん文化祭ひろしま’24和太鼓フェスティバル」最優秀賞 黒瀬高校和太鼓部

広島県立黒瀬高等学校和太鼓部 養訓太鼓は、創部25年目でありながら、今、まさに大活躍中の和太鼓部です。昨年10月20日に行われた「けんみん文化祭ひろしま’24和太鼓フェスティバル」で最高の賞、最優秀賞を獲得しました。最優秀賞が決まった瞬間は部員全員の嬉しさが爆発したそうです。
爆発するほど嬉しかったのには理由があります。実は、昨年獲得したのは優秀賞。最優秀賞に次ぐ賞であり、受賞は素晴らしいことではあったのですが、嬉しさではなく悔しさでいっぱいだったそう。その悔しさを胸に、練習を重ねて手にした最高賞。おめでとうございます!
さて、黒瀬高校和太鼓部の練習を見学させていただきました。練習は火曜日から金曜日16:30~17:30に行われています。練習場所は体育館なのかと思っていたのですが、校舎の最上階、一番端のお部屋でした。音が大きいので、防音対策として、音楽室ではなく、このお部屋なんだそうです。お部屋に入るなり、皆さんが元気いっぱいの挨拶で迎えてくださいました。
現在の部員は3年生5名、2年生1名、1年生5名の計11名。11名いることで、いろいろな種類の太鼓に加えて篠笛やかねなどバリエーションに富んだ音を奏でることができるため、レパートリーも広がるといいます。
挨拶が終わると早速演奏してくださいました。曲目はけんみん文化祭ひろしま’24和太鼓フェスティバルで最優秀賞受賞曲「粋」です。

この曲の作曲者は顧問である藤原先生。先生ご自身も太鼓本舗かぶら屋で活動するプロの演奏者です。音楽大学の作曲科を卒業されたということもあり、もともとはクラシックがご専門だそうです。それが、なぜだか太鼓の魅力にはまってしまい、25年前、赴任した広島県立黒瀬高等学校で和太鼓部を立ち上げたのが、まさにこの方です。
さっきまで笑い合っていたのに、演奏となると、空気がピンと張り詰めて、そこから一気に力強い音が響きます。息の合ったリズム、動き、仲間への信頼感からくる自信が、音の中に垣間見えました。
太鼓の演奏には指揮者がいません。それにも関わらず、複雑なリズムの演奏を多人数で合わせていくのは至難の業。パートごとに合わせて、全体で合わせていきます。合わせるためには人の音を聴くことが肝心。だからいつも先生は「太鼓は聞くことが7割」と教えていらっしゃるそうです。
もう一つ、先生が生徒の皆さんに伝えていることは、「人間として成長すること」。太鼓を叩きながら、技術を磨くだけではなくて、人としての自分も磨く。生徒の皆さんはその言葉を胸に、練習に臨んでいらっしゃいました。
太鼓は手で打っているように見えますが、実際には体全体を使って音を出しています。手先ではなく肩をつかう。上半身だけでなく、足腰もしっかり使うことで、しっかりと音が出せるそうです。
使っている太鼓は、神社などでも使われる長胴太鼓(宮太鼓)、高い音が出るしめ太鼓、桶で作られた桶胴太鼓、とても大きい大平桶太鼓。それぞれの太鼓で叩き方も違います。
楽器を教えてくれたのは生徒の皆さんです。皆さんそれぞれになんとなくの担当楽器が決まっていて、やっぱり、担当している楽器には思い入れがあるのでしょう。説明してくださるときの言葉がキラキラしていました。




演奏を盛り上げるには、篠笛や鐘の音も重要です。音を出すことさえ難しい篠笛を担当しているのは、早瀬さん。先生の信頼を受けて指名を受けました。最初は高い音を出すことができず、練習を重ねたそう。初めて高音が出たときの感動は忘れることができないといいます。間違いなく、人生の宝物となるでしょう。



とはいえ、人生が変わる感動を経験したのは早瀬さんだけではないはずです。というのも、「和太鼓を始めて人生が変わった人!」という質問をすると、即座に「はーい!」と部員全員の手が挙がりました。写真には写っていませんが、先生の手も上がっています。

太鼓が生み出すパワーの下で、何物にも代えられない経験を重ねている。その時間に立ち会えたような気がしました。
さて、今年度、一つ大きな目標をクリアした彼らではありますが、次のステージに進んで行きます。
その一つが今年度から始まる定期演奏会。レパートリーの殆どを披露します。今年は広島県No1の称号を引っ提げての演奏会です。2月1日(土)13:30~くらら小ホール 入場無料。広島県No1の演奏をぜひ聞きに行ってみてください。

さらに、来年度は、広島を飛び越えて、全国規模の大会での演奏もありそう。そこに向けて、曲のレパートリーも増やしていきます。
全く物怖じしない皆さんなので、大舞台でも観客を驚かせる素晴らしい演奏を披露してくれることでしょう。さらなる飛躍を楽しみに待ちましょう。