■東広島で作られた“中世の刀”を見に行きませんか。

 現在、東広島市立美術館では、特別展「日本刀の美 大山住宗重と広島ゆかりの刀剣」を開催中です。刀はそもそも武器として作られたものなので、博物館に展示されることの方が一般的です。

 ただ、刀は、刀自体の反りや剣先(鋒)、刃文だけでなく、柄や鍔などの装飾品も芸術的な観点からの魅力も様々で、近年では美術館の展示で扱われる機会も増えてきたようです。

 さて、今回の美術展を私はとても楽しみにしていました。というのも、八本松と瀬野の間にある大山(おおやま)に居た、刀鍛冶 大山住宗重の刀が展示されているからです。

 大山といわれてもピンとこない方も多いでしょう。実は、この大山は、国道2号安芸バイパスの開通で身近な山となりました。この道にある「大山トンネル」の上、これが大山です。

 バイパスの開通で、現在の山陽道、国道2号は、大山を通ることになりましたが、江戸時代の山陽道、西国街道も大山を通っていました。今とは違い、山道で、しかも急な坂。大山峠と呼ばれる難所でした。平成30年の豪雨災害で道は流されてしまいましたが、その場所には現在でも刀鍛冶のお墓が残っています。

 大山に刀鍛冶が来たのは建武年間(1334-1338)と言われています。筑前から来住した系譜で、宗重という名は室町中期から三代続きました。残念ながら、初代と二代の作品は現存していません。しかも、備後や周防など隣接地域には多くの刀鍛冶がいましたが、安芸の国には他に刀鍛冶がおらず、「安芸の国には刀がない」と言われるほど。このような状況から宗重の刀は大変貴重なものと言えます。

 今回の展示では、そんな貴重な宗重の作品が、15振(ふり)も展示されています。広島県美術刀剣保存協会の皆さんが個人所有のものまで集めてくださったそうです。

 特別展「日本刀の美 大山住宗重と広島ゆかりの刀剣」の展示室は3階のみとなっていて、宗重の作品は入口を入ってすぐの場所に展示してあります。刀の見かたはよくわかりませんが、大山の、あの何もない場所で、こんなに美しいものが作られたのかと思うと、感慨深いものがありました。

 広島県美術刀剣保存協会の方に刀の楽しみ方を伺うと、「難しく考えず、いろんな刀が展示してあるので、自分の好きな刀を探してみてください」と教えてくださいました。

 美術展の最後の展示スペースには、たくさんの刀が一堂に展示してあり、まさに圧巻の迫力です。

 11月30日(土)には「刀剣鑑賞の初心者入門」も予定されています。ぜひこの機会に美という観点から刀を楽しんでみてください。