■森野道昭 絵本と銅版画展

 安芸津在住の森野道昭さんは日ごろから銅版版画の製作をしていらっしゃいます。版画を始めたのは大学生の時。その道で生きて行きたいと思うほど没頭していらっしゃいました。残念ながら環境がそれを許さず、教職に就き、力を注がれました。ただ、版画を諦めきれず作品製作を続けていました。退職後、版画にもう一度きちんと取り組むことを決意し、まずは新しい知識を得るために、広島市立大学で学ばれました。

 そこで出会ったのがメゾチント技法。今回の展示でも多くの作品がこの技法で製作されています。大学に、毎日夜遅くまで作品作りをしている学生がいて、どんな作品か興味があって見せてもらったところ、この技法が使われていたのだそうです。この技法について森野さんは「黒のキメが細かいんんですよ」と説明してくださいました。

 メゾチント技法の製作は、まず、銅版全体に傷をつけるところから始まります。傷をつけたところにインクが入るので、全体に傷をつけると全体が真っ黒に刷り上がることになります。そこから、つけた傷を磨いていくと、磨いたところにはインクが入らなくなり、白く抜けます。磨きながら、白く描いてゆく技法だそうです。磨く度合いによって、白にも違いが出ます。ハッキリと際立つ白、黒を受け入れる穏やかな白、作品には白を使い分ける繊細さも感じられました。この技法を使って応募した作品が東広島市美術展で2017年から2年連続奨励賞を受賞したそうで、その時の作品も展示されています。

 展示されているのは、銅版画だけではありません。テーマにもあるように、絵本が展示されています。カエルさんの顔がいろんな動物の顔に変わっていく「カオカエル」というタイトルの絵本です。絵本のきっかけとなったのは、小学生の女の子との交流。現在学童保育で働いている森野さんは、女の子が遅くまで残っている時間、一緒にカエルの絵を描いて遊んでいました。遊んでいくうち、そのカエルがいいキャラクターに育っていき、絵本の構想にたどり着いたそうです。展示では、作品だけでなく、銅版画の製作方法が紹介されていたり、絵本コーナーには太鼓が置いてあったり。盛りだくさんの展示となっています。

1月16日(月)まで、芸術文化ホールくらら1階 市民ギャラリーで行われています。ぜひ、ご覧ください。