■ 陶芸家 鳥谷部圭子さん

 8月30日、志和町にある鳥谷部ギャラリーに伺いました。ギャラリーに入ると真っ黒いオブジェがあります。いくつかのパーツを並べて平べったい直方体が形作られ、真ん中が大きく楕円形にくり抜かれています。長さがちょうど人の背丈ほど。

 この作品、何でできていると思いますか。答えは陶器。つまりこれは陶芸作品なのです。作者は鳥谷部圭子さん。全国で活躍していらっしゃいます。

 実は、私、この作品は石でできていると思っていました。どう見ても黒い石に見えませんか?鳥谷部さんに伺うと、「普通の粘土が、もみ殻を使って焼くと、こんな風に真っ黒になるんです。実はこういう手法は昔の中国にあって、黒陶文化と呼ばれています。薄い陶器で作られていたようですよ。」と教えてくださいました。

 鳥谷部さんはもともと革を使った作品作りを行っていたそうですが、あるきっかけで陶芸と出会い、ゼロから自由な形作りができるという魅力にすっかりはまってしまったそうです。

 一般的に陶芸というと、湯飲みやお茶碗、壺などが最初に思い浮かびます。ただ、鳥谷部さんのギャラリーにそんな作品はありません。並んでいるのは、陶器とは思えないものばかり。石にしか見えない作品、鉄にしか見えない作品、層が折り重なった作品、古代の造形のような作品、ロボットのような作品、なんだかわからない作品。大きさも様々です。ご本人によると、特定の表現にはまるとしばらくその表現を用いた作品作りを行うそうで、金属の時代、石の時代、層の時代というように、作品が変化しているということでした。

 作品作りには窯の大きさも影響します。屋外美術展では大きな作品が展示されますが、窯の大きさを超えた作品は物理的にできません。窯より大きな作品を作るには、パーツを分けて、順番に焼き、組み合わせる、ということになります。ときには、パーツ同士をボルトで留めている作品も!いくら自由な造形ができるといっても、綿密な窯計画が必要なのですね。

 鳥谷部さんは自然体でソフトな方で、質問攻めにもしっかり対応してくださいました。ただ、そんな状況でも鳥谷部さんの頭の中には、次の造形のことがあり続けているような印象です。もしかしたら、ご本人は意識していらっしゃらないのかもしれません。常に、自然に、造形をイメージし、固まったら形にする。造形活動の中に生活がある。芸術を続けるということの緊張感を拝見した気がしました。

 今後もギャラリーや美術館で鳥谷部さんの作品を観賞する機会があると思います。是非注目してください。